動画シリーズ「JAZZ STANDARD アレンジチャレンジ」

アコースティックデュオ「fuerafuera」がお気に入りのジャズスタンダードを再解釈し、日本語曲としてアレンジする企画。単なる翻訳ではなく、fuerafueraのフィルターを通し、ポップでありつつも切なく陰りある世界観をお楽しみください。


第一回 Everything Happens To Me/夢の中で恋に落ちた

第一回目の「夢の中で恋に落ちた」という曲は「Everything Happens To Me」というジャズスタンダードをアレンジしています。作曲はMatt Dennis、作詞はTom Adair。
何を隠そうfuerafueraの1st Albumのタイトル曲です。

「アレンジ」といっても元の曲とは大きく違い、ほとんどオリジナルソングと言っても分からないまで手を加えています。
今回のアレンジ方法は、オリジナルのコード進行・メロディの印象は残しつつ、日本語詞に合わせ新しいメロディを乗せています。それに合うようコード進行も少し変えました。原曲はバラードですが、テンポを上げ軽快なミディアムスウィングに。
歌詞は、原曲から離れ赤須の体験をもとに作詞しました。夢の中で恋をした相手がいて、夢が覚めたら名前も顔も思い出せなくなっていて、寂しい気持ちだけが心に残るというちょっと切ない物語。

ジャズスタンダードをただ日本語に翻訳するだけではなく、自分というフィルターを通して再解釈・アレンジする試みは、ゼロからの作曲とは違う物が生まれるので、面白いなと我ながら思います。
また日本語にすることで、難しいと思われがちなジャズもよりキャッチーになって、これまでジャズに親しみのなかった人たちも「ジャズって好きかも?」と興味を持ってもらうきっかけになれるといいな。なんてね。


第二回 Tenderly/フタリ

第二回目は「Tenderly」、作詞はJack Lawrence、作曲はWalter Gross。
ジャズのスタンダードになっている曲は映画音楽が多いですが、この曲はポップソングとして売り出されたそうです。

この曲はメロディとコード進行がとてもきれいな曲です。
音楽的に解説をすると、元のコード進行はⅠM7-Ⅳ7-Ⅰm7-Ⅳ7へと移って行くのですが、あまりにもTenderly感が強いので省略しⅠM7から直接Ⅰm7へと変わるという些か珍しいコード進行に。浮かんだメロディに合わせてⅠm7はⅠmM7にし、なんとも言えない悲しさを感じさせるサウンドになりました。
メロディはほとんど変えてますが、原曲で印象的なグッとくるテンションノートの音使いに習い、フレーズのの始まる音や終わる音をそこに着地させるような作りにしています。

歌詞は原曲とは全く違いますが、タイトルのTenderly(=優しさ)のイメージを崩さぬよう、また曲の雰囲気から外れないように物語を紡いでいきました。
好きな人とささやかな事で幸せを感じて時間が過ぎていく。好きゆえに揉めたり恨んだり、そんな事すらも幸せのうちなんだ、というようなポジティブな内容にしたい思いました。
といっても、具体的な設定を作ってから書いたというより、メロディと一緒に自然に降りてきた言葉からイメージを膨らませていったという感じ。
陰りのある曲調とポジティブ目な歌詞の印象が対照的でユニークさもある曲になったと思います。
原曲では、曲の最後の節に”so tenderly”と歌う部分があるのですが、何か似た語呂で曲に合う言葉は無いかと考え、”そう フタリ”。

納得できるアレンジができたと思います。


第三回 All Of You/あなたと私

今回のアレンジの題材曲は、Cole Poter作曲の「All Of You」。アレンジ後の題名は歌詞で繰り返す「あなたと私」。fuerafueraの曲は男女二人がテーマが多いです。この曲もその一つです。

この曲はメジャーキーの曲なのですが、陰りあるマイナーコードで始まります。開放弦(左手で弦を押えず弾く)を使い輪郭朧げなイントロに。
理論的に言うと冒頭は「4度マイナー」で、4度マイナーから始まる曲はとてもレアなので取り上げてみました。この微妙な暗さが「考えすぎて夜眠れなかった」というイメージと重なりました。

どんよりした空気感から抜けそうで抜けずに、浮き沈みしてるのがまるで人の気分みたいです。ポップなんだけど、でもやっぱり終始どんよりしてる。
曲も歌詞もそういう「なんだかずっと微妙」な世界に終始いて、どこにも着地できない浮遊感が特徴になったと思います。


第四回 When You Wish Upon A Star/七夕の歌

今回のアレンジは邦題の「星に願いを」で知られる「When You Wish Upon A Star」。そう、言わずと知れたピノキオの主題歌です。

ある日「これに曲つけてね」と大江が持ってきた詩に、赤須が曲を付けました。歌詞は七夕の織姫と彦星の物語が題材になっているとのことで、「星に願いを」でアレンジすることに。

メロディに対して言葉が多目だったのでコード進行を倍に伸ばしました。
曲のロマンチックな雰囲気を崩しすぎないように気をつけながらコード進行を分解、印象的な部分を再構築しました。歌詞やメロディの足し引き、ハーモニー部分などは、2ndアルバムのレコーディングをするにあたり二人で何度も調整を繰り返しました。

日本の伝説と外国の童話がいい感じに合わさった、かな?この企画面白いなあ。


第五回 I Thought About You

“think”の過去形の”thought”過去形なのが深みが増しますね。
元の曲「I thought about you」という曲から題名はそのまま。他のシリーズ同様、コード進行を取って、メロディと歌詞を乗せ換えています。

fuerafuera結成よりずっと前、赤須がとあるレコーディングで「I thought about you」を録音することになった際、まさに録音開始寸前でこのアレンジが降りてきました。全くジャズの雰囲気はなく、リズムはフォーク・ミュージックでよく用いられる3フィンガーっぽい感じ。
アイデアがまとまる前にそのまま勢いで録音スタート。イントロとアウトロに新しいリフを付けたけど、基本のコード進行は極力変えずに、リハモナイゼーション、転回系を駆使しました。
そのアレンジがとても気に入ったので、のちに自分でメロディと歌詞を付けました。元の世界観からかけ離れないようバランスをとりつつ。

話は変わりますが、昨年、鍵盤奏者の金子雄太さんが初の弾き語りアルバム『Pedal Of Rhodes』にこの曲を収録してくれました。そして出版の際に、作曲者のJimmy Van Heusenのご家族に確認してくださり、なんとこの歌詞が日本語歌詞として認めいただけることになったというエピソードもあります。

「君の事を想っているよ。君を探して旅に出るよ。電車に乗ってみたよ。流れる景色にあの日々重ねる。君の事を想っていたよ。君を探して旅に出たけど、どこに行ったって何をしていたって、君がいるI thought about you」


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